では、それらの資質をどうやって身に付けるのか。

私はNKK(現JFEスチール)を振り出しに、GE、LIXILというグローバル企業で長く人事担当を務めてきた。その経験からいえるのは、次のようなことだ。

社長の日常は決断の連続だ。必ずしも時間的猶予が十分にあるわけではない。その中で、誰からも命じられず、誰とも相談できないまま、最適の意思決定をしなければならない。

その域に達するには、若い頃から「自分が立つ!」という覚悟で前のめりに仕事に取り組んでいなければならない。いくら一生懸命にやりましたといっても、命じられたことや、与えられた仕事をその通りにこなしているうちはダメである。社長になりたいなら、「私の会社」「私のLIXIL」という強い当事者意識を持ち、ときに上司に意見しながら、失敗を恐れず判断力を磨いていくしかないのである。

総じて日本人は、この種の自己主張が苦手である。たとえば子育てひとつとっても、外国人とはずいぶん違う。中国人や韓国人、インド人であれば自分の子供に「一番になれ」「勝て」と教え込む。米国人なら「Be yourself」(自分の考えを持ちなさい)だ。対して日本人は「他人に迷惑をかけるな」「思いやりを持て」と、自分を抑える意識を伝える。こうして育つと、「いい人」にはなれても「強い人」にはなれない。

もちろん、社会の成員として「いい人」が増えるのは素晴らしいことだ。しかし、変化の激しい時代に大組織を率いていくには、日本人一般が思っている以上に「強さ」という要素が重要になる。